美容師として美容室などでキャリアを積み重ねている方の中には、美容室の管理業務やアシスタントの労務管理、支店やエリアの管理などを任されている方も多いのではないでしょうか。ある程度美容師としても経営管理の責任者としてもキャリアを積んでいくと、そろそろ独立して自分の美容室を持ちたいと考えることもあるでしょう。しかしいざ独立に・開業について計画を立てはじめると、必要となる資金や物件選びなど、やらなければならないことがいっぱいです。なかでも資金調達は、自己資金だけではなかなか開業資金の準備はできず、開業を志す皆さんにとっては悩みの種です。今回はそんな資金調達の方法についてあまり知られていない方法をいくつか説明していきます。

1.美容室の開業にはそもそもどれくらいの資金が必要?

2.もうひとつの選択肢「中小基盤人材確保助成金」

3.求職中の美容師が独立・開業するなら「受給資格者創業支援助成金」

4.他にもあるいろいろな助成金制度

5.助成金ってどうやってもらうの?

まとめ

1.美容室の開業にはそもそもどれくらいの資金が必要?

そもそも美容室の開業にはどれくらいの資金が必要でしょうか?ひとつの例として美容師が1人で10坪程度の美容室を考えてみましょう。この規模で開業にかかる資金の内訳は、まず物件の取得費用などでおよそ150万円、内装工事費用でおよそ400万円、専門機器や機材などの設備費用で150~180万円、集客広告費用が20万円前後、その他の事務用品や雑費で20万円前後、これに加えて経営が軌道に乗るまでの4カ月分ほどの運転資金を合わせていくと、だいたい900~1,000万円ほどはかかるということになります。もちろん立地などによって物件取得にかかる費用は違ってきますし、従業員を雇って開業する場合はもっと資金がかかると考えるべきでしょう。これらの資金をすべて自己資金で調達するのは難しいので、大部分のオーナーさんは金融機関から借り入れすることになります。こうした小規模な店舗事業の開業に際しては、政府系金融機関からの借り入れが有名ですが、美容室の開業に関しては借入額の3分の1程度は自己資金を持っておいたほうがよいという傾向があるので、融資を受ける場合でもある程度の自己資金(約200万~300万円程度)は必要になってくると考えておきましょう。

2.もうひとつの選択肢「中小基盤人材確保助成金」

資金調達の方法の中でも金融機関からの借り入れは非常にメジャーな方法ですが、これ以外にも資金調達の方法として有力なものが助成金制度です。助成金とは政府の機関などがある一定の政策実現のために、該当する事業者にお金を援助してくれる制度で、支給するそれぞれの政府機関での審査に合格するとお金がもらえます。つまり融資ではなく援助金なので返済の必要はありません。助成金はかなりたくさんの種類があるのですが、美容室の開業支援に関してもっとも有名な助成金が「中小基盤人材確保助成金」です。この助成金は人材雇用を促進する目的で作られた助成金制度で、従業員となる基盤人材(年収350万円以上で事務的・技術的な業務の企画・立案、指導を行うことができる専門的な知識や技術を有する者)を雇い入れるごとに140万円の補助金が支給される制度です。基盤人材は最大5人まで助成対象となっているので、美容院の独立・開業で美容師を数人雇って開業する場合はこの助成金の対象となる場合が多いです。ハローワークなどで複雑な手続きをすることもなく、また支給額は最大850万円と高額なので独立・開業の際の助成金の中でも人気の制度になっています。

3.求職中の美容師が独立・開業するなら「受給資格者創業支援助成金」

さらに少し変わった助成金をご紹介しましょう。例えば美容室に勤めていてそこで雇用保険に5年以上入っていたとします。そして今勤めている美容室は自分の求めている仕事条件と合わない、あるいは転居などのやむを得ない理由で美容室を退職したとしましょう。失業手当をもらいながらハローワークで新しい美容室を探しているけれども、なかなか希望条件を満たすところがない。仕方がないから自分で美容室を開業しよう。こういう場合に支給される助成金が「受給資格者創業支援助成金」という制度です。この助成金は雇用保険に5年以上加入していないと要件を満たさず対象外になりますが、他にもさまざまな細かい要件を満たさなければなりません。ポイントは最初から起業を考えていた人は対象外であることです。ハローワークで求職中に起業を思いついた人が助成の対象となる少し変わった助成金制度です。創業費用の3分の1、最大200万円まで援助してくれる制度でうまく利用すると経営の大きな味方になってくれます。

4.他にもあるいろいろな助成金制度

こういった助成金の制度は年間で約800以上も実施されているといわれています。手続きが複雑なため利用する人が少ないのが実情のようですが、美容室の開業・独立の際に役立つ助成金制度はまだこの他にもありますのでいくつかご紹介しましょう。まず「トライアル雇用奨励金」。ハローワークなどで休職中の未経験者などを雇い入れることを奨励するために作られた助成金制度で、ハローワークからの紹介で雇い入れた人を最低3カ月以上雇用すると1カ月につき1人当たり4万円(条件を満たせば5万円)支給されるという制度です。事務員などを雇う場合などには考えてもよい助成金です。他には「キャリア形成促進助成金」。美容室などではアシスタントとして雇った美容師を高い技術を持ったスタイリストとして育成するために、さまざまな研修を受けさせてHIQスタイリスト検定などの資格を取得させ、従業員の技術向上を図りたいという場合も考えられます。そういった従業員の技術向上などに対して援助がされるのがこの「キャリア形成促進助成金」で、美容室の経営においては事業の性質とも相性の良い助成金制度です。詳しくは厚生労働省のホームページやハローワークの窓口などに問い合わせてみましょう。

5.助成金ってどうやってもらうの?

さてこういった助成金の支給は一般的にどんな流れになるのでしょうか?先ほども述べた通り助成金というのは融資ではなくもらえるお金です。そこでいつもらえるのかという事が問題ですが、基本的に後払いが原則です。したがって資金繰りなどには向いていませんし、すぐに開業資金がほしいといった場合も有効ではありません。あくまでも事業を支援してくれるためのお金と考えた方がいいでしょう。そしてまず募集要件に当てはまる助成金を見つけ出して自分から応募しなければなりません。応募してから書類審査、面接審査などがあり、その審査に合格してから受給対象になります。受給期間中は経費や雇用の記録などを正確に記録し、保管しておく必要があります。そして受給対象期間が終わると報告書などの所定の書類をそろえて提出、担当機関の検査を経てようやく助成金の精算手続きという流れになります。助成金への応募や必要書類の準備などはなかなか複雑で、これが助成金制度のいまひとつ普及しない原因となっているのですが、助成金を利用したい場合は専門家がたくさんいますので、そういった人たちを頼るのが賢明だといえます。美容室経営で役立つ助成金は厚生労働省関係のものが多いので、労務管理でお世話になる社会保険労務士に相談してみるのがよいでしょう。

まとめ

このように融資以外にも資金を調達する方法はあります。各自治体や役所などが実施している助成金制度は、手続きの複雑さや数の多さなどから利用している事業者は少ないのが実情です。審査もありますから必ず援助が受けられるという保証もありませんが、受給対象となれば経営の大きな味方になってくれるだけではなく、返済の必要がないという点が大きな魅力になります。ただ資金繰りに利用することはできないのであくまでも事業経営の補助としての位置づけとして考えたほうがよいでしょう。手続きが面倒くさくて複雑なのが難点ですが、そこは助成金に関する専門家に一任しておけばよいのです。これから美容室を開業されようとしている方は資金調達の方法にはこんな方法もあるんだという事をぜひ心に留めおいてください。