どの街を歩いていても、さまざまなタイプの美容室の看板をたくさん見かけます。

ということは、美容室の開業・独立は競合も多く厳しいものだということが窺えますね。美容室で勤務している美容師、あるいはこれから美容師を目指そうという方の中には将来自分の美容室を開業して夢を実現したいと考えている方も多いでしょう。しかし美容室の経営ということになると、ヘアメイクの腕前はもちろんのこと、その他にも各種の許可や資金調達、立地選びや広告活動、労務管理などなど、経営者としての能力も必要になります。この記事では、美容室経営に関して必要な資格や法的な手続きのおおまかな流れについて解説していきます。

1.美容師になるにはどうしたらいいの?

2.管理美容師とは?

3.保健所への開設届け出

4.税務署への届け出

まとめ

1.美容師になるにはどうしたらいいの?

まず美容室を経営するためには経営者自身が「美容師」の資格を有しているか、「美容師」の資格を有している者を雇用しなければならないという決まりがあります。したがって自分ひとりで独立・開業するという場合は、必ずオーナーが美容師資格を持っていなければなりません。まだ美容師になっていない場合は、国家資格である美容師資格の取得から始めることになります。美容師になるにはまず美容学校を卒業し、国家試験に合格する必要があります。美容学校は「厚生労働大臣指定校」と校名の表示がされている専門学校です。たまにビューティースクールやヘアメイクスクールなどの校名にもかかわらず厚生労働大臣の認可を受けていない学校もあるようですが、そのような学校では国家試験の受験資格を得られないので学校選びの際は注意してください。美容学校はだいたい2~3年の教育課程で最低2,000時間以上勉強します。そして春と秋の年2回行われる国家試験を受験することになります。国家試験は実地試験と筆記試験があり、両方に合格すると晴れて美容師となります。筆記試験は100点満点中60点以上で合格ですが、1科目でも0点があると不合格です。実地試験はしっかり学校で訓練すればよほどのことがないと不合格ということはないようです。最終合格率は約60%ですから、きちんと準備すればそれほど難しいハードルではないでしょう。

2.管理美容師とは?

ひとりで開業するのではなく、複数の美容師が同時に勤務する美容室の場合、美容師法第12条の3によって「美容師である従業者の数が常時2人以上である美容所の開設者は、当該美容所を衛生的に管理させるため、美容所ごとに、管理美容師を置かなければならない」と定められており、管理美容師の設置が法律で義務付けられています。通常の美容室では美容師が複数いるのが普通ですから、美容師のうちの誰かはこの管理美容師の資格を持っています。管理美容師は「美容師の免許を受けた後3年以上美容の業務に従事し、かつ厚生労働大臣の定める基準に従い都道府県知事が指定した講習会の課程を修了した者でなければならない」とされていて、国家試験にパスして美容師となった後、美容室で3年以上の勤務経験を経て講習を受けることで取得できます。講習は公衆衛生について4時間、美容所の衛生管理について14時間で3日間の課程です。時期や場所は都道府県や地域によっていろいろで、応募期間も1週間など短い場合も多く、しかも年2回の開催なので、講習を受けるためには早めに調べて準備しておく必要があります。将来独立を考えているかどうかにかかわらず、ある程度美容師として年数をこなした場合は講習を受講しておいてもよいでしょう。講習料は18,000円ほどです。

3.保健所への開設届け出

美容師や管理美容師の資格の他に必要になる届け出はまだあります。美容室を開業するには保健所に開設の届け出をし、開設検査をクリアしないと営業できません。この美容院の開設基準は各都道府県や自治体によって細かく異なっているので、開業したいエリアにある自治体の保健所に事前に確認しておきましょう。

例えば東京都では最低13平米の作業室が必要で、作業面積13平米の場合作業椅子は6台まで、洗い場は流水式の設備であることや、換気設備の基準、消毒器具や消毒設備の取り決めなども細かく多岐にわたっていますので、内装工事や設備工事の前の段階で図面を持って保健所に相談に行ってください。設計内容については内装工事業者にお願いして相談してもらった方がスムーズにいきます。

内装工事業者なら消防に関する届け出などもやってくれるはずです。事前相談を経たら必要書類を整えて保健所へ提出です。届け出の後の開設検査が終わってようやく開業となるので、検査希望日の遅くとも1週間前には提出するようにします。開設届には所定の開設届に必要な事項を書きこみ、施設周辺の平面図と施設の設計図、従業員名簿などを提出します。

感染症予防のために従業員の健康診断書を添付する必要がある場合もあります。そしてこれらを保健所に提出した後1週間ほどで保健所の開設検査が行われます。これをクリアしてやっと営業開始です。しかし油断は禁物。保健所は随時、衛生管理面を中心に立ち入り検査にやってきますので営業を開始したらお客様のためにも衛生管理をしっかりしておかなければなりません。

4.税務署への届け出

さていよいよ開業です。開業となると美容室に限らずどの事業主でもやらなければならないことがもうひとつあります。それが税務署に提出する「開業届」の提出です。この開業届は個人事業主か、法人かで若干変わってきます。美容室を開業するオーナーのほとんどは個人事業主としての開業だと思われますので(美容室全体の約77%が個人事業主)個人事業主として税務署に「開業届」を出すことになるでしょう。「開業届」は開業後1カ月以内に税務署と市町村に各1通ずつ提出します。

それぞれの届出書は提出用と控え用それぞれ2通ずつ作成し、それぞれに収受印を押してもらいます。控え用は銀行口座の開設や補助金の申請などで添付書類として使いますので必ず作成してください。「開業届」と同時に「所得税の青色申告承認申請書」、従業員を雇う場合は「給与事務所の開設届出書」「源泉所得税の納期の特例の承認申請書」などの書類を提出する必要がありますが、各税務署や自治体によって書式に差異があるので税務署に相談に乗ってもらいながら書類を作成します。

税務署が税理士を紹介してくれる場合もありますので相談してみましょう。もし美容室を法人で開設する場合は、まず会社の設立登記をしなければなりません。

この手続きは司法書士にやってもらいます。そして登記して2カ月以内に「法人設立届出書」を税務署に提出します。これには定款のコピー、登記事項証明書、設立時貸借対照表、株式名簿などを添付しなければなりません。このように個人事業主と法人では開業の届け出の手続きの流れは違ってきます。

まとめ

以上のようにざっと説明してきましたが美容室を開業するには法律上の手続きだけでもこのようにいろいろなものがあります。これに加えて立地の選定、従業員の確保、工事の手配、資金の調達に広告方法の選定など、オーナーが経営者としてやらなければならないことが山積みです。したがってオーナーは重要な経営判断にかかわるところは自分で行い、手続きや工事など専門家に任せた方がよい部分は多少のコストがかかってでも専門家に任せる、といった判断をその都度していく必要があります。事業の運営で最も大切な資源はオーナーの体力と時間です。上記のおおまかな手続きの流れを参考にしてもらい、スムーズな美容室の開業に役立ててください。